金利規制の経過・特例措置導入等に反対する会長声明

2006.10.03

金利規制の経過・特例措置導入等に反対する会長声明

平成18年10月3日

沖縄県司法書士会

会長 石垣和博

 

声明の趣旨

  1. 出資法と貸金業規制法の上限利率の検討にあたっては、少額短期・事業者特例等の特例措置等のいかなる例外規定も一切認めないこと。
  2. 現在の利息制限法の金利区分を変更せず、出資法の上限金利を現行利息制限法の制限利率まで引き下げること。
  3. 数年間での段階的な金利引き下げ経過措置を認めず、貸金業規制法43条のみなし弁済規定を改正法施行時に即時廃止すること。

 

声明の理由

  1. 自由民主党「貸金業法の抜本的改正の骨子」の内容
    同骨子では、貸金業の適正化、過剰貸付の抑制、多重債務者対策本部の設置等、規制強化、多重債務問題対策の方向が示されたこと自体は一定の評価ができる。
    しかし、消費者・経済的弱者保護の立場から深刻化する多重債務問題の抜本的な解決を図ることを目的とした貸金業制度等の改革であったはずが、経過・特例措置の定めや、更には利息制限法の上限利率の実質的引き上げを行うという、多重債務者救済に逆行する制度改悪といわざるを得ない定めが設けられている。
  2. 経過規定に関して
    同骨子によると、公布から上限金利引き下げまで概ね3年間は「体制準備期間」として出資法上の年29.2%での貸付が可能である。改正法施行後は契約書面に「利息制限法超過金利は支払い義務がない」と記載しなければならないが、同時に「借り主の同意がある場合、書面交付の電子化を認める。」、「リボルディング契約に基づく個別の貸付に係る契約書面・受取書面の交付について、借り手の同意がある場合、マンスリーステートメントによる代替を認める。」といった結果的にみなし弁済の要件を緩和する方向での定めがなされている。
    今求められていることは、みなし弁済の即時廃止であり、改革本来の目的をいたずらに遅延させてはならない。
  3. 少額短期貸し付けに関して
    「個人向け・事業者向け少額短期貸付け」について、上限金利の引き下げ後2年間の経過措置として、上限金利が年25.5%まで認められる。上限金利が下がっても、貸付総額を30万円、契約期間は1年以内、同時に3社まで利用できるとした個人向け少額短期貸付特例は、借り換えの禁止規定もなく、少額短期を名目とする借り換え契約によって、長期間にわたり潜脱的に利用される結果をもたらすことは明らかである。
    法人又は法人の代表者を対象として、総額500万円まで、契約期間は3ヶ月以内とした事業者向け少額短期貸付特例に関しても、同様に借り換えの禁止規定もないことや、日掛け金融特例の悪用事例のように、事業者であるように装わせた貸付が横行するなど潜脱的に利用されることが予想される。
    通常の貸付と併用ができることや無担保を条件としていないことからも、商工ローン及び不動産担保融資の借入が100万円以上500万円程度である実情を踏まえ、年25.5%の金利負担は、多くの事業者の負担増となることは明らかであり、中小・零細な事業者の経営に直結する改悪といわざるを得ない。
  4. 利息制限法の区分変更による実質的金利引き上げに関して
    貸付元本額が10万円以上50万円未満の貸付では現行18%から20%に、100万円以上500万円未満の貸付では現行15%から18%に引き上げられることになる。
    利息制限法が制定された1945年の銀行平均貸出金利は年9%であり、現在が年1.6%であることからすれば、利息制限法の制限利率自体も高すぎるというべきで、物価上昇に合わせ引き上げることの合理性はない。
    利息制限法の制定趣旨は、高金利に苦しむ庶民金融利用者の保護であり、資金需要者である借主保護のための強行法規である。
    大多数の国民の生活や、中小零細事業者の経営が破壊されず、健康で文化的な生活ができる金利にすることで健全で豊かな社会を実現することが法改正を行う原点であるならば、利息制限法の制限利率は、むしろ引き下げの方向で検討されるべきものである。
  5. 金利に対する県民の願い
    これまで当会は、出資法の上限金利引き下げに関し、多重債務者救済に取り組む立場から、沖縄県民の声を法改正に反映させるべく、県議会及び県内各地方議会に「出資法の上限金利の引き下げ」等を求める陳情活動を行ってきた。その結果、県議会及び41市町村議会中35議会において採択され、その旨の意見書が国会及び関係行政庁へ送付されている。県民所得は全国最下位、失業率は全国1位等と産業基盤が脆弱な県経済の問題が指摘できるように、沖縄県において多重債務問題は、きわめて重要な社会問題であり、上記のような改正がなされることは、県民の総意に反することである。
    全国青年司法書士協議会の調査によると全国各地においても出資法の金利引き下げに賛同する市民の署名は300万人を超え、全国各地の地方議会での同様の意見書採択は、都道府県で42議会、市町村議会で1100議会に達している。
    よって当会としては、現行の利息制限法を厳守し、特例を設置することなく速やかに出資法の上限金利を利息制限法まで引き下げる方向での改正を強く求める。